第111回 『激論!リサイクルかリユースか』(板紙段ボール新聞R5年10月7日付)  掲載より

EUにおけるゼロプラスチック政策と紙器・段ボール業界の動き。コロナ後も市況が上向かない日本の業界にとっては羨ましくも思えましたが、夏頃から彼の地で〝ざわつくニュース〟が出ています。

それは、EUがプラスチック使用の復活を命じる規制改正を議会で通そうとしており、段ボール・プラスチックを問わず全てのパッケージ素材の(リサイクルではなく)リユースを義務化するという内容です。

段ボールはリサイクルには適した素材ですが、リユース即ちすぐには捨てず繰り返し使う包材には向かないのが一般的です(筆者は、自宅に届いた箱は丁寧に保管し様々な用途に用いる優秀リユーザーですが)。関係者は、新たなプラスチック容器が市場になだれ込んでくるリスクと、長年に渡り取り組んできたプラスチック削減とは相反する内容に失望感が漂っています。

これに対して段ボール業界団体では「プラスチック事業がリユースシステムに組み込まれることで気候変動への取り組みの妨げにもなる」「運送事業と通販の段ボールパッケージの例では、2040年までに90%をリユース素材で占めるという目標の達成には、81億個の新しいプレスチッククレートが必要でその重さは1200万トンになる」「そのクレートの半分をリユースのために洗うだけで160億㌧の水が必要」「プラスチックトレイは最低63回リユースしないと環境的にサステイナブルにならない」と反論しているそうです。今後もこの論争から目が離せませんが、地球環境の急速な悪化が深刻な今熱い議論を重ねる欧州にエールを送りたいと思います。

「誰が何を言おうとも紙器・段ボールは人に優しい!と」九州ダンボールさんから頂いた段ボールスリッパ=写真=に素足を載せて秋風を感じ優雅な時間を過ごすのでありました。なお、本稿はDSスミス社配信のニュースを参考にしました。