第92回「ドルッパってなに?」(板紙段ボール新聞R4年3月7日付)掲載より

我々印刷・紙器・段ボール業界人としては外せない、ドイツ・デュッセルドルフ市で開催される国際見本市ドルッパ(Drupa)、2020年は新型コロナで中止になったものの2024年には催行予定です。


この70年もの歴史あるドルッパですが、意味は「印刷と紙(ドゥルック&パピーヤー)」というドイツ語の単語を組み合わせたもので、紙と鉛筆のように切っても切れないコンビネーションのオリンピックイヤーの重要な祭典なのです。

しかし、マルチメディアの普及で紙媒体から電子媒体の時代へ、紙も印刷もその使命を終える時が来たと思わざるを得ない様相です。しかし、ドルッパは副名称を『国際印刷・メディア産業展』とし印刷と紙が別れてそれぞれの方向に進んでいるという印象を持ちます。

今やデジタルテクノロジーにより印刷する対象は水と空気以外なら何にでもできる、紙、金属、ガラス、木材、テキスタイル、食品、最近はカフェオレの表面までプリントができますね。そして、立体印刷、3Dもドルッパのカテゴリーに入っています。

一方、紙も印刷用紙は下降の一途ですが、本コラムで幾度も紹介しましたとおり、脱炭素社会の実現に向けプラスチック、ガラスの代替素材に裾野を拡げています。我々はイノベーションを起こす力を養えば新しい価値を我々の産業の中で生み出せる素晴らしい時代にいると実感します。写真は国の重要文化財に指定されている愛媛県の道後温泉の本館の保存修理工事中のショットです。ふつう工事現場はテント生地やブルーシートで覆われて写真に収めたくない光景になりますが、フルカラー印刷が施されたこの大きな覆い、筆者の知人が様々な角度から写真に収めて送って下さいました。印刷も紙も楽しさは衰えないと業界人として幸せに思ったのでした。

写真提供:山本清治氏